演劇


2001年1月
1/7(日)  Studio Life「トーマの心臓」

シアターサンモール

今年一発目。

実はほとんど予備知識も無く行った。劇団のこともほとんど何も知らなかった。いつものように当日券でシアターサンモールに入りとりあえずトイレに行こうとして「あれ?」と思った。女性が列を作ってるのはまぁわかるとして男性トイレも女性用になってるのだ。ライブ会場みたいだとおもいながらあたりを見渡すと男子トイレの表示が紙で貼り付けてある。そちらに向かって行くと急に狭い螺旋階段を登らされる。この辺でなにかしら不安になる。さて階段を上がるとそこは音響室だかの明らかに関係者サイドのフロア。扉の一つに「WC」の文字があったので空けてみるとそこには洋式便器が一つだけ・・・・。「こ、これだけ?」と思いながらとりあえず用を足す。釈然としない気持ちで会場に入ってびっくり。まぁいるわいるわ・・・・女、女、女・・・・・。ジャニーズのライブよりか女性比率高いんやないか?

っていきなり関西弁になってもしゃあない。見た感じ補助席も出てる満員の会場の95%は女性だと思った。そしたらばもうある程度劇の内容は想像できるわな。始まってみたらやっぱりそうだった。ドイツのとある学園(および寮)が舞台。登場するのはかっこいい系の男性が多い。ノリは完全に少女マンガの世界。そりゃそうか萩尾望都だもんな。しかしこれはどうやら固定客がかなり多そうだ。下手すりゃ全公演見に来てる人もいそうだぞ・・・・。

作品の方は決してイロモノではなく、さすが再演を重ねてきてるだけあって、細かいところまでよくできてる。原作がしっかりしてるってのもあるのかな。舞台は学園の生徒トーマ・ヴェルナーがユリスモールに遺書めいた手紙を出し、いきなり死亡するところから始まる。手紙を読み衝撃を受けるユリ、数日後学園にトーマそっくりのエーリクが転入してくる。細かく綴るとキリが無いけど、ユリとエーリクの関係をベースにもう一人の重要人物オスカーをからめたストーリーが展開する。3人それぞれのサイドストーリーもきっちり作られていて次第にそれぞれの心の傷が浮き彫りになっていく。しかもそれらはきっちり本筋にからんできて、その構成には感心してしまう。焦点になってくるのは真面目で品行方性だが心を閉ざしてしまっているユリスモール。人の暗黒面が浮彫りになるラストの展開はなんとなくツインピークス(ふる)のクーパー捜査官を思い出した。

でも少年同士の恋なんかがごく当然のように描かれてると男にはちと辛いかな。いや年寄りくさいけどさ。やっぱりちょっとね。圧倒的に女性が多いのはしょうがないだろう。でも再演を重ねるのもうなずける良い作品だと思う。ま、こういう劇団もあってこそ演劇界はおもしろいんだろうな。

1/14(日) MOTHER 「インビジブル・タッチ」
紀伊国屋サザンシアター


MOTHERは若手公演も入れると4回目。最初は粟根まことが見たかっただけなのだが、行ってみたら面白くって欠かさず見るようになった。ここはいつも話がおもしろいよね。

今回は独立したばかりの国(ダンジリアだったかな?)が舞台。左遷同様の形でこの国の日本大使館に派遣されてきた(というか第一号)外務省の役人立花には上司と不倫している妻、家庭裁判所送りになっている娘と失語症にかかっている息子がいて、家庭内はかなり困ったことになっている。


さて、赴任してきたこの国もかなり変わっている。憲法は日替わりだし、警察は週番制、宗教は「おばあちゃんの智恵袋」とかなりいいかげん。立花一家も入国早々道に迷い警察も手が出せない「無法者天国」に迷い込む。この「無法者天国」の奥地には秘密が・・・・

いつものようにギャグも満載で笑わせてくれる。今回は牧野エミさんの「おばば」が良かった。あの姿勢毎日続けるのはつらいだろうなぁ。細かいしぐさまで行き届いていて「さすが」と思ったね。最後はびっくりだったけど。息子のしゃべりはおいしいよね。何言っても笑えちゃうからねぇ。

ここは、若手が元気だよね。ちゃんと育ってるもんね。それでいて着実に観客も増えてるんじゃない。強いよね。宮吉さんも難しい役をうまくこなしてた。でも今回は2日目だったせいかもしれないけど、ちょいと若手全体で言葉のミスが多かったような。なんかセリフごまかしちゃったとこもあったよな。あとラスト曲間違えた?サザンシアターでやるぐらいの劇団なんだから今後もっと要求される部分も厳しくなっていくと思うけどね。がんばれ!!

最後は泣けたかな?僕はそうでも無かったけど。ストーリーは面白いけど落としどころは平凡かな?ま、でもいつも面白いんで次回の話も期待してしまう。欠かさず行きつづけるだろうな。

そうそうインビジブル・タッチはやっぱりジェネシスのヒット曲から来てるのね。なつかし〜。フィル・コリンズ元気かいな?


1/26(金) 地球ゴージャス「クインテット」
アカサカVシアター


地球ゴージャス初観劇。地球ゴージャスは言うまでも無く岸谷五朗と寺脇康文の企画ユニット。この2人を軸に毎回外からこれぞという役者をひっぱって来て出演させる。今回だと戸田恵子と加藤貴子と中村綾。最近こういうタイプの見せ方多いね。

僕は初めてだからよくわからないけど、これまではけっこう大掛かりなアクションやダンスを取り入れた作品をやってきたらしい。でもその反動で小さいものがやりたくなった。そんなわけで第5回公演「クインテット」は、セットをロープや棒など最小限のものに抑え、出演者も5人だけ、ハコもあまり大きくなく、とある意味かなり意欲的な作品となったみたいだ。
 
内容は全4話のオムニバスものだ。ところどころはさまれる浮浪者のシーンが4つの話をつなげる役目を果たしている。(とか言いながら、注意してなかったのでちゃんと確認したのは2つぐらいだったが。)


最初の話が一番濃かったな。男2人に女3人ですき焼き鍋を囲んで一組は三角関係を、もう一組は不倫関係を、それぞれどうするかもめている。男2人はそれぞれ針のムシロの上。岸谷と寺脇の性格付けがイメージどおりで面白い。一話目でいきなり泣きがはいってしまう。

続いてネコを助ける話。狭い路地に入って出られなくなった子ネコを助けようとする自称特殊レンジャー隊のメンバー(岸谷)は実は大のネコ嫌い。責任感が強いばかりに落ち込む彼を野次馬の住人がちょっと変わったやり方で元気付ける

次は加藤貴子と中村綾の姉妹の話。第一話に続いていたりする。派手で男にもてる姉となんでもメモってしまうクセがありちょっと暗めでコンプレックス持ちの妹。姉は落ち込む妹を元気付けようとするが、実はその姉にも姉なりの悩みがあって、うまくいかないねと慰めあう。あの何気ないふうのラストシーンが印象的だったね。

最後は残りの三人で歩道橋の上。うまく行ってない歌手、漫画家、探偵の三人が、たまたま好きな場所である歩道橋の上で(ビルの隙間から東京タワーが見えるから、だったかな?)出会い、なんとなくお互いに語り合い、励ましあう。


全体のトーンはわりとゆるゆるな感じ。普通の人たちが、お互いに自分をさらけだすことで共感しあって励ましあう。「肩の力ぬいて気楽に行こう」ってのが全体のテーマかな。

雰囲気が去年見た「ビューティフル・サンディ」をちょっと思い出した。こちらはセットも無いに等しいし、照明もわりと暗めだったけど。ささやかなことを穏やかに暖かく綴っていくってことでは似てるかな。


内容的には話の順番がちょいと引っかかったけど(一話目が重すぎるのと、ラストの話には全員を出演させた方が良かったのは?)、いたるところで炸裂するギャグも切れてたし、やっぱり楽しかった。さすが客を呼ぶ劇団だけのことはあるね。あと女優さんが3人ともむっちゃきれいで、とってもよろしゅうございました。特に加藤さん、よろしゅおます。なんたって「半神」にでてたもんね。

あ、そうそう座席だけはカンベンだった。イス小さすぎ。あまりに小さくて一瞬我が目を疑った。コートとか傘とか置き場に困ったね。あと座席に傾斜が無いので前の人の頭がけっこう邪魔になる。サンシャイン劇場じゃないけど、できれば同じ環境で次回以降の作品をするのは避けて欲しい


2/3(土) NODA・MAP「2001人芝居」
スパイラルホール

さ〜始まった。
しかし、これが・・・・
難しい、今回は難しいと思う。

さてスパイラルホールというものには初めて行ったけれども、いや建物の前は何度も通ってるのだが実は入ったのは初めて。なるほど中はああいうふうになっているのだとまずは関係無いところで納得。スパイラルホールは3階。普段はギャラリーか何かで使うことが多いのだろうか?あまり演劇用にはできていない気がする。

キャパはだいたい300人弱ぐらいか?やはりチケット記載の整理番号の順番に座る。僕は20番。意外にも最前列であった。ただし右端。そう20人ずつの列になってる。チケット持ってる人は20で割ればある程度の座席位置の想像つくよ。ちなみに僕の持ってる残り2回分のチケットはかなり後ろの方であることが判明した。

両側の端に立見の人が入っていた。片側ずつ20人弱ぐらいか。立見だから当日券電話予約では無いかもしれないし、チケット取れなかった人は会場に行ってみるのも手かもしれない。まだあきらめるには早いかも。

さて、肝心の話。「一人芝居は今の年齢が限界」とのたまわっていた野田さんは、その言にたがわず、舞台狭しと動き回る。しゃべりまくる。お得意のギャグも満載。近頃他の役者にメインを譲ってサポート的な役回りが多かったのでこれにはうれしい限り。最前列といいつつも角度がかなり悪かったので見え具合はどうかとも思ったが、舞台をフルに使ってくれたおかげで、僕の目の前あたりにも何度かでばってきて、顔を真っ赤にしながら演技をする野田さんを間近に見ることができた。これにはかなり感動。野田さんツバとばしまくりながら、ほんとに気合いれて演技してた。これが野田秀樹だ。役者としての野田を強烈に感じた。

話のほうは、実はよくわからなかった。TVモニター障害者の話だ。ま、でも中身は次回のレポにしよう、って実は会場が暖かすぎて、それでなくても疲れ気味の僕はだんだん眠気との格闘になってしまい、話をおさえきれなかったのだ。なんとも情けない次第。今度はちゃんと見るさ。

上演時間は1時間15分ぐらい。終わったときは短いと思ったけど、今思うと一人なんだからこんなもんかもしれない。

さて、ひげ面の野田さんの一般ウケはどうかな?かなり印象違うよ。今回は小さいパンフを全員に配布する代わりにパンフの販売は無かった。代わりに携帯のストラップを買う。「2001人芝居」仕様だ。3回で全色そろえるかな。


2/21(水) そとばこまち「友情しごき教室」
本多劇場
そとばこまち初体験。他の劇団員はほとんどわからないので当然生瀬さんに目が行く。やっぱりウマイ。

全体のテンポはそれほど早くない。漠然ともっと早い展開を予想していたのでこれは意外。ロックというよりレゲエ的な間だと思った。即興性よりもよく練られたギャグが冴える感じ。

ストーリーは主役の吉岡を通じて夢と現実が交錯する世界。最初はギャグが炸裂していたが後半はけっこうシリアスに重いテーマ。同じ社会人としては身につまされる部分もあったなぁ。自分の居場所を探している、やりたいことがわからない等等、最後の落とし方はちょっと今ひとつぴんと来なかったけど。

この後半の深さが人気を呼ぶポイントなのかな?個人的には左翼のおねえさんの演技が好きだったな。とにかくチケットはけっこう取り辛いし、これからもっと人気を拡大していきそう。この劇団もこれからもっとチェックしていきたいね。

2/22(木) NODA・MAP「2001人芝居」(2回目)
スパイラルホール
誰が難しいって? 
全くとんでもない誤解だ。今回の話はいつもにもましてわかりやすい。前回はやはりかなりの部分寝てたらしい。今回の作品は比較的わかりやすくて、しかも批評性が高い作品だ。

モニター中毒者。テレビなどOA機器などのモニターに浸りきった人達の姿を誇張して描くことでその病根を浮かびあがらせている。現実逃避。虚構の世界で夢に浸る人々。そして教育問題。自ら子供を育てることを放棄した人たち。そしてモニターの前で育つ子供達。さらには孤独。孤独に対する野田秀樹のとらえ方が冴える。人は孤独を恐れすぎる。忌み嫌いすぎる。孤独はそんなに悪いものではないのに。そうどれもこれも現代社会に対する痛烈な皮肉だ。

虚構世界の幸せに浸ることが悪いことなのか?これは確かに難しい問題だ。野田は批判的に展開してるけれども、ちょっと考えてしまった。

孤独の無い一人ぼっち。TVで徹底的にオプティミスティックに純粋培養されたモニター中毒者が初めて自分の言葉で語るとき、どんな言葉を吐くのか?さすがは野田秀樹。納得するしかないオチをつける。

今回はラストもしっくりきた。最近なんとなくラストが唐突な印象の作品が続いてたような気がする。それに比べると今回は非常に計算されたバランスの良いラストであると思う。

初日に比べるとさすがに余分なところが削られてかなりすっきりとまとまりのある印象。ただダジャレはオヤジ系だったが。自虐的なギャグも健在だった。

今回はあまりにもしっくりきた。しっくりきすぎて終演後しばらく呆然としてしまった。なんだかひどく心をひっかくのだ。キズつけるというのとは違う。今回は野田秀樹の天才ぶりを再確認できたと思う。

さすがに体力的にはかなりきついようだ。初日では出なかった泣き言も聞かれた。でもあと一週間ほど。気力で頑張って欲しい。千秋楽にもう一度会いにいくから。

今日の席は良くないと思っていたが行ってみたら7列目ぐらいで意外に前の方だった。しかもちょうど真中だったので最前列とはいえ端っこだった初日に比べて客観的に見ることができた。また暖房も過剰でなくちょうどいい感じ。おかげでかなり疲れてはいたけれどかなり集中して観ることができた。今日は確かにかなり理想に近い形で鑑賞できたと思う。

2/24(土) 花組芝居「かぶき座の怪人」
全労災ホール/スペースゼロ

なるほど〜、これが花組芝居か〜。
女性が多いな。やたらと多い。以前Studio Lifeを経験してたから、それほどとまどわなかったが、男子トイレで疎外されてるのは同じ

要するに歌舞伎ベースの演劇なのだ。主宰の加納幸和という人はとにかく歌舞伎が好きらしい。
大見得、踊り、セリフなど全てにおいて歌舞伎の要素が入ってるし。おまけに舞台設定は新劇、歌舞伎界がテーマ。ギャグやパロディも随所に入ってるけど根っこのところに中途半端が無い。身のこなし、ダンスなど思わず見ほれてしまう。加納幸和という人はかなりの完全主義者らしい。

だが全面肯定かというとそうでもない。新感線がやった「阿修羅城の瞳」などはホンモノの歌舞伎役者をひっぱってきていたが、それに新感線的要素を組み合わせてほどよくアクを抜いてたので一大エンターテイメントに仕上がっていた。それに比べるとここの作品は完全主義にとらわれるあまり本質的にゆとりみたいなとこが少ない気がする。ちょっと見てると疲れるのだ。実際歌舞伎見たい人は歌舞伎座行くわけだし。

今日は体調が悪かったので見てるのが辛かった。その分ちょっと辛口。一番感動したのは劇中劇の「欲望列車」千秋楽公演での九重八重子役の加納幸和の演技。本筋より見惚れてしまった。


2/25(日) KOKAMI@network「恋愛戯曲」
紀伊国屋シアター


千秋楽に見参。
いや〜永作博美って細い。
作品の方は・・・・今回はイマイチ。

シンプルなセッティングのわりに同じシチュエーション(3部構成?)が何回も繰り返されるのでつながりがよくわかんなくなってくる。しかもなんかそれぞれがきっちり描き分けられてないので見てるほうは非常にややこしい。混沌してわけわかんなくなっていくのは鴻上さんお得意だけど、今回はちょっと偏執的に同じシチュエイションで描きまくっていたような。あれで場面の展開でもあればもう少し注意して見れただろうけどなぁ。鴻上さんの作品は見る方が考えないといけないので疲れてるときには大変だ。それに一回では厳しいなぁ。

恋愛を描いてるうだろうけど、なんかよくわからんかった。う〜んだめだ。今回はフォローしようにも何も残らなかった。鴻上作品でこんなに残らなかったのは珍しい。

千秋楽のお楽しみ。出演者全員ステージに集まって主に大森さんが挨拶。あと大入袋に入ったハート形のキャンディを配った。僕はもらいそびれたけど。警備員の制服着た人がキャンディ持ってきておもむろにばらまきはじめたんだけどよく見たら鴻上さんだった。あとでステージに上ってみんなと一緒に挨拶。照れたように笑ってました。れいによって開演前には受付あたりに出没してたけど、しかし憎めないひとだねぇ。次回作は・・・・・・期待してるよ!!


2/28(水) NODA・MAP「2001人芝居」(3回目)
スパイラルホール


いよいよ千秋楽。この芝居を3回も見れたのは本当にラッキー。
しかも初日・中盤(後半)・千秋楽と時期もうまくわかれてて、この芝居の成長過程を見ることができた。

芝居ってのは公演期間中の最初と最後では随分違うんだっていうのを恐れ多くも野田秀樹の芝居ではじめて確認できたというわけだ。

初日は寝ちゃったけど、やっぱり寝ちゃったってのはそれなりの理由があると思う。野田さん自身どっかとまどってるようなところが見えてたし、距離が近かったからか、野田さんの表情からは「どうも勝手が違う」っていうのが浮かんでるような気がした。ギャグもいつものつきはなしたような鋭いギャグでは無く、どこか遠慮気味に悪く言っちゃうと自信無さげに繰り出してた。

それが22日なると、なんだか別のステージのようによくなってた。なんかごちゃごちゃした話にメリハリもできてたと思う。なんと言ってもストーリーが良く出来てた。(その分即興性に欠けるのかな?)

千秋楽は正直言うとまずまずの出来だったと思う。22日の方が良かった。やっぱり千秋楽というのは初日とは別な意味で意識しちゃうんだろうな。千秋楽までついに言い通してしまったきんぴら五秒。ドモホルンリンクル、椎名林檎と矢井田瞳、渡辺えり子ネタ(千秋楽には本人が会場に来てたらしい)健在でした。

やはりあれだけの芝居、1ステージやるだけでも相当な体力を消耗するようで、初日には全くでなかった泣き言が22日のときは「疲れた〜」「休みたい」で、千秋楽は「ただいまから3秒間の休憩に入ります。」「はい第2部開始です」のギャグに現れてた。野田さん「年齢的に一人芝居は今が限界」だとのたまわってたが、本当に今しか出来ないだろうなぁというステージを見せてくれたと思う。

とにかく今回は野田秀樹という人のすごさを再認識できたと思う。ほんとうにこの人の芝居に出会えてよかった!!
2001年3月
3/11(日) キャラメルボックス「エトランゼ」
シアターアプル

今日はいっぱいだった。シアターアプルにあんなに入ってるのは初めて見た。通路という通路が全て客で埋まってたし、なおかつ立見まで入っていた。今公演の上演期間の短さが客を集中させる原因だったようだ。ちなみに次の「風を継ぐ者」はまだまだチケット余裕だそうな。

今回はわりと地味だったな。テーマも重め。号泣とかそんな話でも無かったし。

でも前回のように「登場人物が多すぎて話がぼやけてる」といった批判は無いだろうな。いつものスタイルに戻ったと言うべきか。2つのストーリーが並行して進むような感じ。写真家ななえの独立直後の状況とななえの姉一家の崩壊の危機。

言いたかったことってのは「結局自分の選んだ道を精一杯やることが大事なんだ」ってことか。キャラメルにとっては特に目新しいメッセージでも無いだろうし、ある意味基本に戻ったとでも言うべきか。

とにかく派手さが無いので一般受けは悪そう。どれだけ泣ける?最近のキャラメルのテーマみたくなってるし、そういう意味でも辛いかな。でもこういう反復は大事だよね。あとに残らなくてもこういうのきっちりやるのは大事なことでは?

しかしキャラメルも巨大化しちゃったのか、だんだん創立メンバーの意図とは違う方向に行きつつあるのかもな。加藤さんや西川さんはどういうふうに感じているのだろう?そういえばなんか西川さん今日の公演では浮いてる感じがした。

さてキャラメル続いては「風を継ぐ者」の公演。どうなるんでしょうか?

3/19(月) INOUE KABUKI「野獣郎見参 Beast is RED」
青山劇場

お〜、あの感じだ。「阿修羅城」が蘇る。このけたたましいロックの音。さすがのINOUE KABUKI。

最初は苦言。前も思ったんだけど、音楽の音、大きすぎない?セリフ(というか歌)の内容がさっぱりわからんじゃない。音あげりゃいいってモンじゃないよ。「長いな〜」とか自分で突っ込んでたけど、ありゃほんとに長かった。正直言うと前半の印象良くなかった。

ストーリーはさすが、安倍晴明がキーポイントになるあたり、「阿修羅城」ともつながってるね。なんていうか悪そうなやつがほんとに悪いってのが逆に新鮮かも。セットは凝ってるし、話のどんでん返しも効いてるし、単純に楽しめるしでやはり相当ポイント高い。

さて、堤真一。すごいですねぇ。しなやかな動き。野田作品ではあんな派手な殺陣こなすこと無いし、あれだけ見事に立ち回られると、男でもほれぼれするね。かっこいいっすよ、ほんとに。とても30代後半の人とは思えませんね。

あとはやっぱり松井誠ですか。西門役の憎憎しい演技が良かったね。さすが実力のある人は違う。今回の粟根まこと、端役扱いの割にはよく出てたなぁ。前回よりおいしい役回りだったじゃない。ギャグも切れてたし。やっぱりあれでないと。早く白ムチを蹴落として主役はって欲しいもんだ。

会場は・・・・新橋演舞場の方が面白かったな。花道とかけっこう遊べるじゃない。やっぱり使用料とかも高いのかな?でもあそこの方がいいよ。次回は是非あそこでやって欲しい。

3/24(土) オーツーコーポレーション プロデュース公演「鬼」
全労災ホール SPACE ZERO

松村武作品も何作か(といっても2作?)見てなんとなく傾向がわかってきた。とりあえず難解だ。でも見てしまう。この作品は過去2作見たよりはわかりやすかった。うん、これぐらいならついていける。

一組のカップルがたまたま昔の日本の童話の世界に引き込まれてしまう。そこは羅生門の鬼が人を食う世界。この鬼をめぐって桃太郎、金太郎、一寸法師、渡辺綱などかつて鬼退治で名をはせた人たちがなぜか右往左往する。キジもサルもイヌも今じゃ岡山名産きびだんごごときではついてこない。色気のあるネコにひとめぼれ・・・・。

鬼には母親がいる。ときに鬼婆の姿を見せるサエがそう。んでその親子とかかわる高飛びの参助。この3人にはある特別な関係があるらしい。そしてカギを握るのは死んでむくろとなって横たわる茂兵衛。

鬼が鬼としての苦悩。そして人が鬼と直面するときの苦悩。やはり松村武ただのギャグでは終わらせない。何が鬼?何が正義?何が善?をしょ〜もないギャグの連発の中に浮かび上がらせていくのだ。

あ〜、しかしギャグはほんとにしょ〜もない。最初のうちは笑ってたけど、だんだん苦痛になってきた。おやじギャグにもちょっと限度ってもんがあるでしょ。野田さんを見習いましょう。

初日ということもあってか思ってたよりずっと客の入りが悪い。当日券なんて誰も並んでない。松村作品は客を呼べないのか?でも全体的にはかなり良かったよ。見て損は無いと思う。

そういえば日替わりゲストがあるんだね。今日はラサール石井。けっこうあせりながらそれでもギャグを連発して場を和ませてた。あのへんはさすがプロだね。

あんまり劇団の人がわからないので先入観無くて見られたけど、気に入ったのは扉座の山中たかシ、フリー?の山崎樹範あたり。ま、初日だといろいろ問題もあるんだろうし、後半になればもっと良くなるんだろうね。

3/25(日) 大人計画「エロスの果て」
本多劇場

いや〜、すごいもんを見せてもらったな。
「キレイ」じゃだいぶおさえてたんだな〜。奥菜恵にあれはやらせられんもんぁ。

しかしあれだけぎっしりいっぱいの客が舞台で繰り広げられる下ネタオンパレードの作品に見入ってるのはちょっと異様な光景だったな。

阿部サダヲ+宮藤官九郎コンビはあいかわらずギャグのキレがいいなぁ。阿部さんははまるね。「ローリング・ストーン」のときはシリアス系だったから、こないだの「グレープフルーツ」のときといい今回といい、ちょっと情けない系のとぼけたギャグはかなり好き。宮藤さん、今回はあまりにかっこよくないんで最初誰だかわからんかったぞ。

やっぱり時間が経ってしまうと印象が薄れてしまうな。なんにしても強烈な下ネタであった。以上!!

4/7(土) ラッパ屋「斎藤幸子」
新宿THEATER TOPS

年末に見た「泪目銀座」の「オーバー・ザ・センチュリー」
この中でたった一人の悪役磯貝を印象的に演ってたのがここの役者福本伸一。

その劇団ラッパ屋の公演をやってるというので、れいによってひょこひょこ当日券で行ってみました。
場所は奇しくも同じシアタートップス。さらにもっと奇しくもだったのは、席の場所までほとんど同じ。そう最前列のその前に並べられたちっこいベンチ席だ。普通席が満席になるとここがまわってくる。ここは角度が見上げる形になるし、ベンチはちっこいのでかなり疲れるんだけど、でもなんつっても舞台が近い(というか舞台にくっついてる)ので役者の演技が間近に見られるけっこういい席なのだ。自分の30センチぐらいのところで演技をし、汗なんかかかっちゃったりするのである。さらに開演前などステージにしいてある畳の上に荷物なんか載せちゃったりできるのである。ってさすがにこれは係員も注意してたけど。

さてとなんか雰囲気もこないだの泪目と似てるところがある。ここは日本家屋シリーズということで日本的な暮らしを舞台にした身近なものが多いらしいんだけど、話も下町人情系の話が多いみたい。

前回は悪役でいい味出してた福本さんも今回は主役ですごいいい人。真面目でおとなしくて気が弱くてって感じのキャラでこっちの方が地のイメージっぽい気はする。

そうそうタイトルにもなってる斎藤幸子。画数が悪いそうで、美人で人も良くってガッツもあるんだけどパープーで抜けてるのでなんか不幸になってしまうという役どころ。幸子役の岩橋道子さん。実際もきれいな人だった。こういうときは席に感謝だね。でもあんまり僕の近くにはこなかったなぁ。

美奈子役の三鴨絵里子さんの演技も良かった。いかにも下町っぽいキップのいいおねえちゃんって感じで演技も自然でちょっと惚れちゃう。占い師っていったら格好までそれっぽくなっていて笑えた。

話的にはもっと壮絶な不幸話かと思ったけど、そんなでも無かった。まるでチャン・イーモウの作品のようにおさまりがいいけど、ここのはこういう作品なんだっつうことだよね。

幸子との恋にかかわった人達がみんな幸子の実家に集まってきてそこで大切なものを見つけるっていう設定が笑えたね。やっぱり優しい気持ちになれる演劇は大事なのだ。

4/15(日) 「食卓(テーブル)の木の下で〜あの日、あの時、みんな笑った〜」
遊◎機械/全自動シアター
青山円形劇場


地味な作品だったな。今まで見た中でも一番地味だったような。ストーリーが大したこと無いしちょっと退屈だったりした。しかもシンプルなわりに今ひとつ細かいところが描かれてないような印象。パパとママが別れていくところがちょっと浅かったし、かずき(高泉)がいつまでもあの家にこだわり続けた理由も弱いような気がした。

でも悪いところばかりじゃない。だいたいこの劇団の作品の雰囲気は好きなのだ。今回は実際に目の前で料理してくれてむしゃむしゃ食ってくれるので昼飯を食ってない僕にはつらかったけど。でもそんなお楽しみも楽しいじゃない。音楽は今回もセンス良かったよ。

青山円形劇場は客席とステージがやたらと近いから好きだ。しかも今回は最前列だったから白井さんも高泉さんも僕のすぐそばに立ったし、これだけ身近に演技が見れて、やっぱり上手いなぁとため息が出た。

一つの家庭が崩壊していく。でもそんな家庭にもかつては楽しい時間があった。みんな笑いながら一緒に食事していた。いいことなんていつまでも続かない。ちょっとしたことがきっかけで家族なんてあっけなく崩壊してしまう。かずきが大嫌いだった鳥の肉を食べられた日。それは二度と戻らない楽しかった日が終わった日でもあった。

思い出っていつまでも美しい。でも帰れないのだ。人はあの日の楽しさを求めて自分たちの家庭を築いていく。僕はこの先どうなるんだろうか?終わった後、ずっとそんなことを考えていた。

4/21(土) 「風を継ぐ者」
キャラメルボックス
サンシャイン劇場

この作品はキャラメルボックスファンの間でも極めて評価が高い。歴代1、2位を争う作品だろう。

そんなわけで今回は待ち望まれていた再演。そして最近キャラメルとの間に距離が出来はじめている僕には、もう一度キャラメルを再評価するにはちょうど良い作品だと思えた。

ここの劇団は確かに幕末好きらしい。成井豊の趣味なんだろうな。竜馬をたてると新撰組がたたず、新撰組をたてると竜馬がたたず。今回不幸にしてとばっちりを食らったのは長州の人たち。なかなか難しいもんです。中心になるのは小金井兵庫(岡田達也)、立川迅助(細見大輔)、沖田総司(菅野良一)ちっこい沖田総司には新鮮味があったけど、あのキャラではとても人は殺せないような気も・・・・・。不必要な殺人などキャラメルには必要ないけど、武士を描くときにはある程度武士らしい味付けも必要だよなぁ。

さすが名作といわれるだけあって安易に「泣かせ」に入ってない。野球で再会なんてのはちょっと狙いすぎの感じがするが、まさにさわやかそのもの。

だけどなんだろう。劇としての凝縮感がイマイチな気がした。なんだかスキマが多い感じ。とくに前半にその傾向強し。最近感じる西川さんの浮き具合もあいかわらずだしね。若手が着実にでてきてはいるんだけど、まとまりという点ではあんまりいい状態には無いのかもしれない。

ストーリーでは兵庫の人物像が中途半端だったのが惜しかったかな。沖田はおもしろかったけどね。ま、なんにしても演劇は難しい。

5/20(日) 「ウィンザーの陽気な女房たち」彩の国シェイクスピア・シリーズ
彩の国さいたま芸術劇場小ホール

最近旅行記に忙しくってちょっと更新をさぼってた。いかん傾向だな。
今回蜷川さんが入院したもんで急遽鴻上さんが演出を担当することになった。鴻上さんにとっても初のシェイクスピア作品演出らしい。そうだよなぁ似合わないもの。

鴻上さん、個人的にはどうも最近良くない。鴻上さんといえばその昔オールナイトニッポンのまだ2部をやってた頃から、そう演劇の「え」の字もしらないうちから、人生の師とあがめ、とにかく鴻上さんの放送のあった金曜日の夜と言えば学校から帰ってすぐ寝てもAM3:00からの放送は欠かさなかった僕である。

あら?話がそれた?まぁそれぐらい思い入れある鴻上さんだけど、そうそうそれで開演前、会場から外にでようとして、ちょうどやってきた鴻上さんとはちあわせになり、思わず「よぉっ」と声をかけそうになったものだ。

だいたいあの人は開演前はいつも入り口のあたりでぶらぶらしてるし、ぱっと見は我々客以上に普通な雰囲気なんである。もしやあれが演劇の真髄か?あの才能を隠しながら限りなく普通に見せる演技こそ、彼は身をもってわれわれに示しているのか・・・・?違うなやっぱり。

また、話がそれた。そんなわけで今回は正統派なシェイクスピア。鴻上さんれいのカオスのりで、むちゃくっちゃにしちゃうんじゃないかと密かに怖れてたけど、意外にもわりと普通だった。最初のシーンは良かったね。いかにも茶目っ気たっぷりな鴻上さんらしい演出。話の混沌性とギャグのセンスは一級品だけど、今回は話がすっきりしてるぶんギャグがさえてる感じ。ベテラン役者を相手になかなかナイスな演出だ。

役者たちもみんな一癖二癖ありまくりだし、けっこう引き込まれてた。ステージのセッティングも良かったね。一番前だったもんで役者との距離が近い近い。これも演劇の醍醐味だね。

今回は鴻上さんにとってもいい刺激だったんじゃない?鴻上さんは鴻上さんだから、根っこの作風は変わんないんだろうけど。いや〜まてよ、そのうちshow caseシリーズ作品を作っちゃったりして、泣きの鴻上と言われるようになるかもなぁ・・・・ならんか。

6/9(土)「VAMP SHOW」作:三谷幸喜、演出池田成志
パルコ劇場

なんか最近演劇見る間隔が妙にあいちゃって、いくたびに特有のなんかちょっとした違和感を感じることがある。それにちょっと構えちゃう。いかんなぁ。

ちなみにVAMPっつうのはVAMPIRE(吸血鬼)さんのことだたのね。ちぃ〜っとも知らん方かった。ホラーっつうのはどっかで読んでたんだけども。

出演者は佐々木蔵之介だの最近よく見かける河原雅彦といった若手の実力派をひっぱってきてるし、これで三谷幸喜ならおもしろく無いはずが無い・・・・。無いんだけど、おもしろかったんだけどホラー苦手なんだよなぁってそういうことじゃないか。え〜っと席が後ろだったもんで役者がよく見えなかったのもあったなぁ。ドラマ見てる感じ。

話のほうはいつもの三谷作品とはずいぶん違って、人も死ぬし、悲しくて泣かせるし、なによりいつもばしばし感じるあのあっけらかんとした健全性が無い。根っこが病気っぽい。しかし普通の人間より吸血鬼の方がよっぽど普通に見える設定。どうも意味深だ。
松尾レイ子さんの最後の方のあのシーン衝撃的だった。離れてても総毛立った。さすが三谷作品に出るだけのことはあるわ。

なんにしても、こいつはあと一回ある。今度の方が席が前だ。もっとよくみてこよう。

6/17(日)「VAMP SHOW」作:三谷幸喜、演出池田成志
パルコ劇場

先週に引き続き2回目。
今回は前に比べるとだいぶ前。斜めだったけど役者の顔も確認できたしまずまず。
2回行ってわかったけど、あの冒頭の車のシーン。あれはどうもアドリブらしくって話が前回と違った。

各公演ごとに話を考えてるとしたら、大変だ。串本町の話だけは本筋に関係あるのでさすがに変えられないみたいだけど。
一番良かったのは橋本潤さんでは無かったろうか。そうかこの人新感線の人なんだ。今までにも見てるはずなのに全然覚えてないな。よしよしインプットしておこう。しかしさすが新感線、芸達者が多いな。

そういや、たまたまフライデー立ち読みしてたら、堺雅人が富田靖子と付き合ってるっていう記事が。ほ〜っ上手い事やってるね、と思いつつページをめくると今度は河原雅彦とともさかりえが・・・・。なんてこったい ! !いいねぇこれからは演劇やってる人がもてるのかねぇ。あらら話がすっかり下世話な方へ。

今回はいつもの三谷作品と違ってベースに深い悲しみあるような気がしたな。特に坂東、全ての責任を一人で背負う男。見ててせつなかったな。彼はきっとずっと死に場所を求めて旅を続けていたに違いない。死に顔までわかんないけど、見たらたぶん一番安らかな死に顔をしていたはず。

バケモノになった方がよっぽど人間的。一番恐いのは人間だって、ちょっと「赤鬼」なんかを思い出したな。やっぱりよく出来てる話です。舞台に近かったので前回は遠目で気付かなかったしかけなんかにも気付けたのでよかった。でもやっぱり松尾さん、女はこわい・・・・。

6/23(土)「ムーン・パレス」遊◎機械プロデュース
新国立劇場小劇場

初の新国立劇場だ。しかもおもしろいことに明日は野田秀樹で中劇場の方に出没する。全く意識してたわけでも無いので不思議な偶然。

今作は遊◎機械プロデュースということで白井さんは出なくても行ってしまう。ラッパ屋の福本伸一は最近わりと気にいってるので、それもちょっとあったかな。

ポール・オースターという作家、白井晃同様僕も「スモーク」という作品で名前を知った。やはり白井さん同様ほれこんでしまい、何冊か本を買った。でも白井さんと違うのは、どうも本とは相性悪いのか、未だ一冊も読破したものが無いのである。文体が感性に合わないとでもいうか・・・・。そんなわけで実は最初はけっこう不安だったんである。寝るんじゃないかと・・・。

最初の展開はイマイチだった。スピード感も無いし、遠藤君よくとちってる。一緒にやってる福本さんもちょっとやりづらそう。もともと「スモーク」の監督ウェイン・ワンでさえこの作品の映画化を断念したぐらいだから、もともと非常に難しいんだと思うし、これは白井晃の汚点になるかな?とかなり心配だった。

んなわけで前半は話の内容も限り無く暗く、笑えないので、睡魔との戦いだった。でもキティ役の高橋かおりなんかが登場してくるとだんだん展開も滑らかになってきた。ポイントはトマス・エフィング役の陰山さんかな。キャラも最高で笑えるし、深いし、もう最高。この人が全体を救ってたような気がする。

話のほうは強引なつながりの連続。「こいつまでつながってるのか?」って感じで登場人物が複雑にからみあう。そしてみんなよく死ぬ。エンディングの雰囲気は良かった。ちょっと野田っぽいかも(笑)。

やっぱり難しい作品なんだよね。とちりが全体に多かったのは準備不足かな?ステージもちょっと広すぎる(奥行きが)気がした。ま、でもこんなもんかな。

6/24(日)「贋作・桜の森の満開の下」 作:野田秀樹
新国立劇場中劇場

さぁ「贋作」だ。

夢の遊眠民社時代の作品はこの前「半神」の再演を見たのが唯一の体験だったけど、予想通りというか感性とスピード感でつっぱしっていて、見るものに考えさせる、まさにイメージどおりの作品で、納得する一方自分にはちょっときつい感じがしてたのも事実だ。

さて今回の公演。「半神」とは少し違った。遊眠社後半の作品というのもあるのかもしれない。どこかつくりが今のNODA・MAPに通じるものがある。ラストの落とし方がまずそうだし、どっか超越したような、悪く言えば全体に冷めた視点を感じるとこもそう。

結果から言うと良くもあり、悪くもあったような気がする。深津絵里の演技はいろいろ評価がわかれてるみたいだけど、どうもこの作品の限っては僕もNOかもしれない。もちろん頑張ってる。すごい頑張ってるとは思うのだが、声がどうにも一本調子。もう一段の裏が無い。もともと難しい役だから、要求される部分も大きいのは仕方無いところ。途中でやかましいだけに聞える部分もあった。

京野ことみの存在はおもしろかった。だいたい野田作品に出てくる役者というのはみんな野田カラーに染まって見える。古田新太だって野田作品中では野田カラーの古田なのだ。ところがこのとぼけたお姉さんはどこかテンポがずれてるので浮いている。早寝姫やってるうちはまだ良かったけど、桃太郎で出てきたところなどなぜ登場する必要があったのかクビをひねるくらいだ。珍しく野田イズムの隙間が見えた。あんな印象を受けたのは今まで野田作品で見てきた中でも無かったことかも知れない。

セットもシカケも十分豪華。ケイコもよくできていたみたい。昨日の遊機械はとちりでペースを乱されたが、こちらでは少々のトチリではびくともしない安定感があった。あんなすごい人達がそろってても十分な準備ってのはすごい大事なことなんだな。あの奥行きのある舞台も十分に使いこなしていた。

ただ今回2部構成だったのだが1部はわりと退屈だった。ギャグが抑え気味だったから?いや違うような気がする。どこか最近わりと見かける煮詰まってる部分を感じた。野田秀樹はこの後また海外に勉強に行くとか聞いたような気がしたが、それも正解だろう。確かにこのままだとどんどんはまっていくばかりだと思う。もちろんその間野田作品が見れなくなるのは寂しい限りだけども。

そうは言ってもサクラ散る下でのシーンなど、かっこつけ野田秀樹の面目躍如といったところで、やはりしびれてしまう。

鬼が人になる。パンフにはアニミズムから国家へというような解説がなされていたけれど、確かにこの話もいきつくところ善悪では無いのだろう。人が体制を作り上げていくうちに失ったもの。夜長姫の死はそれを象徴していたのかも知れない。

7/12(日) 「ペーパーマリッジ」 サードステージ(show caseシリーズ)
紀伊国屋ホール

ダンナはホモの仮面夫婦(浅野和之と長野里美)。しかし肉体関係は無いもののいたって仲の良い夫婦。そして結婚に踏み切れないその妻の妹(旗島伸子)。田舎から突然上京してきた。姉妹の母親(木野花)。4人を中心に舞台は展開。ホモが出てくるところ、全体の雰囲気などはやっぱり「ビューティフル・サンディ」に似ている。

ストーリーはいたってわかりやすいのだけど、前回同様ホモの扱い方について判断するのが難しい。日本はまだまだホモは市民権得てないしね。「ビューティフル・サンデイ」はホモ肯定を前提に作られていて、その是否についてどうこう言うのはほとんど無かったけど、今回は母親の口からけっこう言わせてる。「ビューティフル・サンデイ」のときに批判あったのかもね。ただこの母と娘の激論はなかなか迫真で、どうかするとこのシリーズの持ち味である「のほほ〜ん」とした雰囲気を壊しかねない気がしたのも事実。ちなみに僕は保守的なのか母親派。

演技ではダントツで、母親役の木野花さんがすばらしい。他の2人がかすんでるもの。親だったらきっとこういう感じなんだろうなって部分がすごいよく出てました。僕は長野ファンだけど、今回はもう木野さんのモノです。木野さんで笑って木野さんに泣かされました。

妹の描き方がちょっと浅かったかな。どうもおまけっぽかったし、最後の落とし方もまた随分性急な感じ。ちょっともったいなかったかも。

総合点では「ビューティフル・サンデイ」の方が良かったですね。でもこの雰囲気なかなか貴重です。また新作を楽しみに待ってます。

8月22日(水)「二人の噺」 〜The two men’s story〜
パルコ劇場

「泪目銀座」の福島三郎さんの作・演出による中井貴一と段田安則の2人芝居。
二人ともさすがに場数を踏んでる役者なので、安心してみていられた。
最初と最後の中井貴一はちょっと説教臭かったけど。

落語家で泥棒噺の得意な段田安則と本物の泥棒の中井貴一。この泥棒さんが落語家段田さんちに泥棒に入ったことから話がややこしくなる。しかもこの泥棒さん何故か中井さんが作った創作落語に出てくる泥棒さんとキャラがそっくり。泥棒しているところを見つかった中井さん何故か落語家の段田さんと気があってしまいひんぱんに段田さんちに遊びにくるようになってしまうのだ。

後半はちょっと予定調和なところもあるけど、ついついほろっと来てしまう。やっぱり福島さんは話作りが上手い。それにこの2人、とちりも少なく、さすが大人の演劇といったところ。まぁスリリングな魅力っていう意味だと物足りないかもしんないけど。

最後はうまくやられた。あの親子のエピソードは最高。こういう見ていてぬくもりを感じるオチはいい。最後に中井貴一のたるいセリフが無かったらもっと良かった。


2001年9月

9月12日(水)「大江戸ロケット」 INOUE KABUKI
青山劇場


う〜む、今回はおちるな。
前から2列目というすごい席だったのに、妙に退屈だった。

まず主役の山崎裕太。残念ながらいしだ壱成の方がいい。顔はキャラにあってるけど、演技にキレが無い。どうもたるい。ここが壱成ならと思うシーンが随所にあった。もともと急遽代役にたったのだから、多くを求めるのも気の毒かもしれないけど。あと奥菜恵、きれいな顔を近くでみれたのはうれしかったけど、演技はやっぱりイマイチ。主役二人がイマイチなんだから、全体がしまるはずもない。古田新太が一人で全体のテンポを支えてる感じ。

役者がイマイチならストーリーもイマイチだ。過去2作は善悪がはっきりしていたし、特に悪系のキャラがとても魅力的だった。音楽もセットも派手で劇画調なんだから、その方が映えるのだ。今回は悪系のキャラがやたらと物足りなかった。憎憎しさのかけらも無かった。

あとコマが1枚2枚足りなかったか?「阿修羅城」の平田満や「野獣郎」の江波杏子みたいな実力派がもう一人でもいればだいぶ違ったかも。藤村俊二は、別系統として峰岸徹一人ではどうも弱い。その峰岸だって中途半端な役だったし。

今回の粟根まこと。やっぱり中途半端。どうも今ひとつのりきれてない。いつものような味もない。まぁどれをとってもこんな感じだったということだ。

一つだけ面白かったこと。古田が「ネズミ花火を2グラム袋に入れて隠し持ってつかまった・・・」とか言って山崎君につっこみ、山崎君が「俺じゃないですよ」とかえしたギャグ。いやぁブラックだ。

9月14日(金) 「ファントム ペイン」第三舞台
テアトル銀座


第三舞台が終わる。

10年間封印とのことだが、これからは10年ごとに昔の仲間で集まってわいわいやるという同窓会的コンセプトなのだから、鴻上尚史もこの劇団での今日的意義は終わったと考えてるのだろう。

第三舞台の作品は実は2作しか見たことがない。過去2回の作品は個人的にはどうもイマイチだった。「リレイヤー」と「朝日のような夕陽をあびて」だったが、どちらもカオスの中でば統一感が無くまとまりの無いまま終わっていく感じで、これが第三舞台なのかと思っていた。
 今作は有名な「スナフキンの手紙」の続編だ。スナフキンを見てなかった僕はちょっとつらいかと思った。確かに最初が前作のラストにつながっているためちょっととまどったが、意外にシンプルな構成だったのでしばらく見ているうちに慣れて来た。

かつてスナフキンが上演されるに当たっての鴻上さんのコメントを読んだことがある。スナフキンはいつも一人でクールに生きてるけど、表面に出てこないところで孤独に苦しむこともあったに違いない。そんな部分を表現したかったとかそんなことを言っていた。

今作ファントム・ペインもその延長にあるのだろう。存在する二つのパラレルワールドの中で現在の日本にとんできた彼らだが、どうにも感じる居心地の悪さをどうすることも出来なかった。元の世界に帰ろうとする者、そこに残る者。時間の流れはそれぞれにそれぞれの想いを抱かせる。

最後だから気合いれましたというよりは、これまでみんな良くやってきました的なのりでわいわいやってる感じで、そのぶん見やすかった。正しいもののために誰もが戦う世界。一番闘ったものが一番傷つく世界。それに比べるとぬるま湯な現代。僕もパラレルワールドを覗いて見たくなった。買った「スナフキンの手紙」のビデオを研究することにしよう。

9月29日(土) 「ファントム・ペイン」第三舞台
テアトル銀座


ファントム・ペイン・・・医学用語、事故などで失ってしまった腕や足などが痛いと錯覚する症状のこと。

やはり「スナフキンの手紙」を見てから臨んだ方が理解しやすい。

人の孤独を追究するのは鴻上さんの永遠のテーマなのだろう。そしてスナフキンは世の中の多くの孤独な男性がそうであるように、鴻上さんにとってもやはりヒーロー的な存在なのだろう。

人はいつしか人生に絶望し、生きる気力を無くす。ちまたでは人とコミュニケーションの図れない人間が増大している。旅先で手に入れた一通のノートに書き込まれていた無数の言葉。それはシルクロードを東へ西へ旅する旅人が書き綴った本当の言葉。そしてそんな絶望した人々に生きる力を与えてくれる言葉。太郎はその言葉をネットで流し始める。そしていつしかそれは敵、味方、イデオロギーを超えて熱狂的に受け入れられ、「スナフキンの手紙」と呼ばれるようになる。

アジアで放浪していくうちに沈没していく青年たち。これについては「深夜特急」の中にも似たような記載があった。放浪していくうちに、自分を見失い、気力を無くしていく人々。まぁ今の日本にも同じような状況が蔓延してると言えなくもないが。

パラレルワールドの日本では人は正しいもののために闘いつづけている。そしてこの日本では人は表にださない戦いを続けている。緊急避難的にこの世界に逃げてきた山室や後藤田にとってこの世界は煮え切らない理解しがたい世界だった。テンコなどはもっとひどい。こわれてしまって過去の記憶まで失ってしまった。そしてこのひどい世界が今の日本という国ということだ。

クライマックスは前作に比べるとオチにインパクトをつけられないせいか、イマイチまとまりに欠ける。でもこのラスト個人的には好きだ。それぞれがそれぞれの事情で自分なりの落としどころを見つけていく。へらへらしながらも実はしっかり家族を選んだ後藤田の落としどころにはひどく感じる部分があった。パラレルワールド側のキャンディとサキは直接的には登場しないが、彼女達もそれぞれ居場所を見つけて生きているふうだ。お互いがお互いの世界を想像するところにパラレルワールドが存在するというオチもなかなか意味深だ。

全体に集大成的な要素、お祭り的な要素が入っていてそれも緊張感を欠けさせてる原因だと思うが、これは仕方無いだろう。野田秀樹ならこの手の要素はアドリブか小ネタでさらっとやっちゃいそうだけど、鴻上さんだとこんな感じかな。らしくっていい。世間の酷評にもめげず僕はこの作品かなり好きでした。
 
10月3日(水) 「LOVER SOUL」 泪目銀座
シアタートップス


ナミギンの公演を見るのは前回に続いて2回目。ここの作品(というか福島作品)はいつ見ても心が和む。

それは今回も変わらず。相変わらず予定調和だけど、なんか気にならないんだよね。まだそんなに見てないからかもしんないけど。

今回の舞台は病院。登場する患者はみんなガンにやられていて、かなり重症。人の死をネタにするのはあざといし、ある意味卑怯だけど、そんなこと言っても始まらないしナミギンでそんなこと言ってもしゃあないような気がする。

注目してたのは渡辺いっけい。僕がNODA・MAP観る前の作品にけっこう出てた人で、昔NHKの朝ドラ出てた頃はすごいなどとは毛ほども思わなかったのだが、初演の「キル」をテレビで見てぶったまげた。あの作品実はこの人のおかげですごかったのかと思ったぐらいだ。だから一度生で見てみたかった。今回やっとその機会に出会えたというわけだ。当日券の常でまたまた最前列の小さいベンチ席。かなり窮屈だが、それでもかぶりつきだから許せる。渡辺さんの演技はやたらと近くで見れたし。

ストーリーはいつ死んでもおかしくない我妻さん(渡辺)と片桐さん(相馬)を中心に進んでいく。末期だというのに達観して飄々としている我妻さんと、おかしなこと言いながらも熱血漢で正義漢、ついでにいぼ痔をわずらっている片桐さん。二人ともあまりにも魅力的で、まだ入院して間もない青年内藤も引き込まれていく。

登場人物それぞれ恋愛問題を抱えていて、それは登場人物同士の問題だったりもするのだが、死を目前にした人たちの思いが痛ましい。みんな優しい人達で、この救いの無い状況を無理やり引っ張っていく。

ラストはやっぱりそう来るかといった感じ。でも泣けます。まわりも泣いてました。温かい気持になりたい人ならこの作品必見。

11月4日(日) 「バッド・ニュース☆グッド・タイミング」
パルコ劇場


沢口靖子きれい。八嶋さんウマイ。伊東四朗、角野卓造いい味。

今回は楽しめたからいいっすね。最近三谷作品もちょっと意味深なのが多かったので、こんなふうにあっけらかんに笑えるのは久しぶり。「君となら」みたいな感じかな。たぶん三谷さんもそういうコンセプトでやったんでしょう。全体のテンポを支えてたのは八嶋さんの力によるところが大きいけど。生瀬さんはちょっと印象薄かったかな。今後三谷作品続くモンね。ファンとしてはたまらないね。次もチケット確保したいなぁ。

11月16日(金) 「星の姿」 にゃおにゃおProject
シアターモリエール


この劇団を見たのはこれで3度目だが、今回を含めうち2回がオムニバス。リリカルが売りならこっちの方があっているのかもしれない。

全ての話にオチらしいものが無い。淡々と進む。最後まで淡々と終わって拍手のしどころが無くて困った。

人の関係では100%の理解は無い。だが往々にして人はあたかも相手を完全に理解していると錯覚する。壁にぶちあたり否応無い現実を目の当たりにして、人は孤独を感じるのだ。僕達は決して分かり合えないと。

幸せって何?吉本ばななは言った。幸せな人生っていうのは自分が実は一人だということをなるべく感じなくていいような人生だと。あまりにも冷酷な現実の前には人はどうすることもできない。逃げて逃げ回るのもまた良いのかもしれない。

だが孤独を感じれば人を求める。人の孤独もわかるようになる。そこからいたわり、補い合い、愛が生まれていく。いつも思う。アフガンの戦争で人類愛を叫ぶ人たちが、自分の身近な人々をどれだけ愛することができているのだろうかと。
 
脱線したが、この劇団の作品はいつもながら質が高い。今回は生演奏の音楽がいつもにもまして音楽として鳴っていたような気がした。今回の作風だとルー・リードやデビッド・ボウイ、レディオヘッドあたりのロックを使っても面白いかもなぁと思った。

11月18日(日) 「サクラパパオー」 
渋谷パルコ劇場


ラッパ屋の福本伸一に限らず、みんな達者な演技だ。役ははまり役揃えてるし、ギャグは切れてるしとおさえるところはおさえてる気がするんだけど、どうもイマイチ。なんかイマイチ。どたばたで話にまとまりが無い。いやまとめてるんだけど、凝縮感が無い。

役者だと菅原幸子役の角替和枝がさすが。あとはエリートサラリーマン的場役の羽場裕一あたりが存在感あってよかった。福本さんはちょい普通っぽかったかな。今作はラッパ屋がらみにしてはインパクト無かった。

12月8日(土) 「ブリザード・ミュージック」 キャラメルボックス
サンシャイン劇場

前半異様につまらなかった。寝そうになった。ネタがどうというより、なんか足りない。キャラメルにしては珍しいことだ。後半巻き返したが結局最後まで引きづった印象だ。気合入れて声張り上げて演技をしてるだけではダメということか。プロレタリアートなどアナクロ用語で見てるものをひかせたということもあったと思うが、しかし・・・。今まで見てきたキャラメルの中でも最悪だったと思う。ネタ的にはおいしいと思ったのだが。キャラメル崩壊のきっかけとならなければいいが。

12月16日(日) 「ア・ラ・カルト」 遊◎機械/全自動シアター
青山円形劇場 


自分的にも年末恒例になりつつあるアラカルト。これ見ると年末が近い。

毎回同じようなキャラが登場して、同じような話をやって、同じような音楽が鳴ってと、まさにマンネリづくしなわけだが、マンネリも捨てたもんじゃ無いということを最近やっと分かってきた。僕も大人になってきた?

さて、今回のアラカルト。すでに13回目を数えるわけだが、前回に比べるとキレがいい感じがした。前回など後半は出された少量のワインのせいもあったが、見事に眠ってしまったものだ。今回は用心してワインも回避したのでコンディションもばっちり。広すぎないステージにツボをおさえた話しと上手い役者と上手い音楽。他に何が要るというのだろう。

      

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