4.キューバ、人と今
たぶんプラスイメージ?
  長年権力の座に座っているが、今日に至るまで常に国益を優先している。本人はもちろんのこと政府官僚達も特権を認めていない。「キューバの官僚は世界で一番給料が低い」とは、たまたまお世話になった元外交官婦人の弁。配給の列にも平等に並んでいるそうだ(フィデルは並ばない、というか並べない)亡命問題は深刻でもクーデターの話が出てこないのは、国民もこのことをよくわかっているからだという話だ。
  よく働く。何でも自分でやらないと気がすまない&どんなことにでも首を突っ込みたがる性格で、平均睡眠時間3〜4時間。国内せましと精力的に飛び回っている。料理などにもうるさく、よく自分で作ったりするそうな。あ、あと演説好き。4〜5時間話しつづけることも珍しくないらしい
  政治犯は投獄はするが殺さない。「この国が嫌いなら出て行け」が基本スタンスで革命当時大量の政治亡命者(30万人?)がマイアミに出て行った。
  亡命キューバ人が里帰りできるよう、週一便アメリカからのチャーター便が飛んでいる
  個人的に偶像崇拝を嫌っており、キューバを歩いていても銅像はもちろんのこと彼のポスターすらほとんど見かけることは無い。
  90年代のどん底モノ不足等いろいろあっても、未だに高い支持率を保っている。国民は彼のことを敬称はつけず「フィデル」と名前で呼ぶ
  教育が行き届いており、中南米ではダントツの識字率(97%)。
  ユーモア精神に富んでいる。政治的苦境にたつクリントンに激励メッセージを送ったり、公の場で亡命問題なども平気でジョークにできるセンスを持っている。
  病院等医療制度が非常に充実している。国民の診療代はすべて無料。キューバが世界に冠たる長寿国なのはこのため。中南米への協力やチェルノブイリ被災者の治療など国際的な貢献も少なくない。
  ソ連崩壊とともに経済援助が無くなり、ここぞとばかりにアメリカが経済封鎖を強めたため、極端な食料、モノ不足に陥った90年代(一人あたりGNPが1/3になったとも聞く)。米ドル経済の導入、観光立国への転換など思い切った方策で、諸外国の観測をはるかに上回る回復を見せ、一人の餓死者も出さなかった。
  人種差別が無い
  他の社会主義国に比べればかなりオープン。キューバ中どこへ行っても立ち入り禁止区域はほとんど無い。
  ラテン系の国にしては非常に治安が良い。
× たぶんマイナスイメージ
  革命当時、反体制活動家はもちろんのこと国家の利益にそぐわない宗教も徹底的に弾圧。多数の人達が収容所に投獄され拷問にかけられた。また多くのキリスト教教会がとりこわされた。
  革命以来共産党による一党独裁で他政党は存在しない。
  現在に至るまで言論の自由は無い。外国人記者でも不用意な記事を書くと未だに国外退去処分となる。
  ハバナ一極集中をおさえるため、転居の自由は制限されている。
  外国人旅行客に対してはドル使用を義務付けているため、何をするにしても国民の10倍以上の支払いが必要となる。
  ドル、ペソの二重経済の一般化。苦し紛れの市場経済導入とは言え、現在かなりの歪を引き起こしている。この国で裕福なのは、外国人相手の商売をする者やマイアミに住む亡命キューバ人から送金を受けられる家族達。一方で医者、役人その他まっとうな社会人は満足にドルにさわることもできない現状。国あげてドル確保にやっきになっている現状。
  「この国が嫌いなら出て行け」といってももちろんそう簡単に出て行ける訳では無い。野球選手の亡命話などにまつわる決死行は周知のこと。
  社会主義ゆえか昼間でもぶらぶらしている若者がたくさんいる。こういう連中が観光客にたかりにくる。やはり生産性は低いと思われる。
  一般的な世評とは違い、明らかに人種差別は存在している
  緩和されたとはいえ依然としてモノ不足。ハバナはともかく、他の都市ではどこへ行ってもドルショップの前に大量の人だかりが出来ている。
  キューバ国民は自由の無い生活にすでにうんざりしている。本音ではもう社会主義は十分だと思っている。(特に若者)
シドはノンポリ野郎だし、そもそもうちのページで政治色を出す気などさらさら無いのだが、キューバを旅してみて思ったのは、結局この国は良くも悪くもフィデル・カストロなのだということ。老いたとは言え現在のキューバという国は依然この人抜きでは語れないのだ。キューバへの理解を深めるという意味で少しまとめてみた。ちなみにフィデル・カストロにはラウル・カストロという弟(bQ)がいるので、区別するためにフィデルと呼びます。
● フィデル・カストロの略歴
等々、ちなみに生身のフィデルは背が高く、なかなかの美男でやはりオーラをはなってるそうな。見た目もやっぱりカリスマさん。
● アメリカの対キューバ政策について
現在のキューバを語る上で、もう一つ無視できない要素といえば、やはりアメリカによる経済封鎖。アメリカはキューバ革命以来、一貫して(徹底して)反キューバ政策を執りつづけてる。

もともとアメリカは米西戦争以来、キューバを属国とみなし、莫大な投資をしていた。(たとえば有名なリゾート地バラデロはデュポン家が開発したものだし、セントロのランドマーク的なホテル「ハバナ・リブレ」はヒルトン・ホテルとして開業寸前に、革命により一日も営業することなくキューバ政府に接収された建物として有名。)キューバ革命はまさに飼い犬に手をかまれたようなもんだったわけ。この一貫した反キューバ政策の裏には莫大な痛手を蒙った資本家達の根強い反発があることは間違いない。

もう一つ、これら資本家以上に忘れてはならないのがマイアミにいる亡命キューバ人の存在。キューバが嫌で逃げ出した人たちだから当然筋金入りのカストロ嫌いばかり。フロリダ州には実に150万人ものキューバ人が住んでるそうで、今では定着し、裕福となり、市長を始めマイアミ市の中心を形成するようになっている。当然政治的にも多大な影響力をもっており、この人たちが対キューバ強行路線を維持させる原動力になっている。キューバ政府転覆のためテロリズムに公然と資金供与などもおこなっているので、やっかいな存在なのだ。フィデルが殺さずに排除した人々がアメリカの地で反カストロで気炎をあげているのだから皮肉なもの。現体制のキューバに直接投資している企業は、米国企業か否かにかかわらず、米国への投資を許可しないことを盛り込んだ「ヘルムズ・バートン法」が96年に制定され、経済封鎖はゆるむどころかますます強くなっているのが現況だ。

キューバに対する経済制裁を不当なものとする国連決議は、実は毎年のように行われていて98年の採決では賛成157票、反対2票、棄権12票という圧倒的大差で可決されている(反対はたぶんアメリカとイスラエル、日本も賛成している)。過去の経緯はいろいろあったとは言え、現在のキューバはちまたのテロ国家とは違うし、宗教の制限も大幅に緩和、市場経済もゆっくりとではあるが導入されてる。何よりカストロ自身も本音ではアメリカとの関係改善を望んでいるふしがある。

アメリカだってピッグス事件を始めとして100回以上のカストロ暗殺未遂、1903年以来今日に至るまで続くキューバ南部グァンタナモにおける大規模海軍基地保持等、かなりやりたい放題のことをやってきている。北朝鮮のようなもっとひどい独裁国家に対してですら対話の機会を提案している状況に比べると、こと対キューバ政策については多分に感情的で不可解な部分が大きい。今のところ残念ながらアメリカの対キューバ政策が激変する可能性は限りなくゼロに近いけど、実際アメリカ一国だけで、こんな封鎖を続けていてもあまり意味が無いし、一日も早く建設的な会話が始まればいいと思う。
● 私見を少し
キューバを旅行するにあたって、ほんの少しキューバという国を理解した。フィデル・カストロという人については、ちまたによくある独裁者とは一味違うというのが印象。かつての盟友ゲバラが天性の革命家ならこちらは天性の政治家。明晰な頭脳と分析力に優れたゲバラに対し、フィデルは直観力と洞察力にすぐれ、また天性の楽天的な気質を持っているそうだ。

今のキューバがフィデルあってのものだということは間違いない。あの、アメリカを相手に人口1000万人ちょっとの小国が何十年も国を保ってきたこと自体が驚異的だし、政策にはいろいろ問題があるが、評価できる部分だって多い。清廉で無私だという部分は高く評価できると思う。でも彼もすでに70台半ば。フィデルは不死身では無い。彼が死んだとき何が起こるだろう?誰が指導者になるにせよ、フィデルほどの政治力はおそらく無いだろう。

90年代の極端な物不足に対処するために行った、ドル経済および外資の導入、自営業の一部解禁などは確かに思い切った方策で、こういったかつてのポリシーを曲げてまでの手が打てるということ自体、フィデルが現在にいたるまで勤勉で凡庸でないことの証明であるように思える。これによりキューバは危機的な状況をひとまず脱した。だが、この方策は諸刃の刃だ。現在、ドルとペソの二重経済は確実に持つ者と持たざる者を作り出し、それはかつて、健全であった社会システムさえも壊しかねない状況に育ちつつある。

高年齢者ならともかく、今のキューバの若者はみな多かれ少なかれモノにあふれた生活に憧れを持ってる。そりゃドルショップに並ぶ自分達に買えない高価な品物を見ていたら無理もない。キューバ人は靴に執着すると聞いたことがあるけど、実際サンティアゴで使ったタクシーの運転手は僕のはいていたアディダスのスーパースターをしきりに欲しがってた。もしかしたら資本主義になれば自分達の生活も良くなるものという幻想を抱いてるのかもしれない。

でも資本主義はそんな甘いもんじゃない。資本主義は競争社会だ。極論すれば勝たなければ意味の無い世界。いくら教育が行き届いているとは言え、資源も無く競争の無い社会に育った人たちが、そう簡単にうまくやっていけるだろうか?それどころか治安、教育、医療といったキューバが世界に誇る部分まで一気に失ってしまう危険もはらんでる。キューバから亡命する人もたくさんいるが、逆に今のキューバの雰囲気が好きで住み着いてしまう人だってけっこういる。決して魅力の無い国では無いのだ。

フィデルが死ねばキューバは劇的に変わらざるを得ない気がする。でもそこにあまり希望的な観測は見えない気がする。アメリカは対応を変えるだろう。だが、果たしてそれがこの持たざる国キューバにどれほどの恩恵を与えてくれるだろうか?まったくもって不透明だ。

この国の人たちは明るいし楽天的だ。日本とは同じ島国同士だし、もっと交流が深まっていけばいいと思う。この先どう転ぶにせよ、この国には南米各国のような政治も経済もぼろぼろの状態にはなって欲しくない。何とか良い方向にむかっていって欲しいと一介の旅人は思ってる。

(1)フィデル・カストロとキューバ
1926.8.13 オリエンテ州ビランに生まれる
  地主の息子として比較的裕福な家庭で育つ。この間サンティアゴ、ハバナの学校に通う。
1945 ハバナ大学法学部入学
1950 卒業後ハバナで弁護士になる。
1952 バティスタのクーデターを非難
1953 バティスタ政権打倒のためモンカダ兵営襲撃するも失敗、逮捕される。ここから実質的な革命活動始まる。
1953-55 投獄。「歴史は私を許す」の有名な自己弁護演説
1955-56 恩赦により出獄、メキシコ亡命、この頃ゲバラに会う
1956-59 キューバに戻りバティスタ政権とのゲリラ戦
1959 キューバ革命、首相に就任
1962 キューバ危機
1976 国家評議会議長に就任、現在に至る
フィデル・カストロ国家評議会議長(76年まで首相)
チェ・ゲバラに比べるとずいぶん謎の多い人だ。まぁセキュリティの問題から明らかに出来ないってこともあるのかもしれないけど。ハバナ大在学中にドミニカに渡ってトルヒーヨ政権打倒に参加したとか、コロンビアの人民蜂起に参加したとかいう話もある。
● カストロ議長&キューバについてのいろんな事実の検証
たとえばアメリカは批判的な記事しか書かないだろう。キューバ政府からの情報はもちろんフィデル礼賛だろう。どちらも筋金入りなので、見てるほうは何がほんとなのかさっぱりわからない。しょうがないから、見た情報、拾ってきた情報ありったけ並べてみる。シドの見た間違いない真実もあれば、ほんとの噂だけのものもあります。そこから何が見えるのか?もちろんシドにもわかりません。


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